~ 理事長のブログ ~

 ⇒ プロフィールはこちらをご覧ください。

 ⇒ ご意見・ご感想はこちら。

2022年12月26日(月)

2022年を振り返り

師走、私は一日中走っております。
クリスマス、今年もサンタさんの親戚のヘータさんが出現しました。
2022年、今年もあと僅かとなりました。



振り返ってみると、時は早く過ぎ去ります。今年はどんな年になっていたのだろうか。
2022年は、100点満点で83点ぐらいだろうか。
前半は今二つの半年だったか。後半は遅れ分を取り戻した半年になりました。

松永家は初めてで最後の中学受験を体験しました。中学受験は大学受験より大変です。
理科は物理、化学、生物、地学。社会は歴史、地理、倫社、公民、そして現在のトピックスを学びます。国語は短時間大量文章処理能力を問われ、作文まであります。

大学受験よりも広い分野をできるだけ深く学びますので、小学校5年生からの週末だけお江戸でお勉強するだけで勝ち上がることは厳しいです。もし、今からもう一度中学受験を目指すのなら小学校1年生から始めるでしょう。今の塾、人生までも教えています。凄いです。

私は医師、医療を通して社会貢献をしたいと願いました。そして、地元医師会理事になりました。医師会へ流れてくる情報量はとても多く、同じ内容が地元、県、日本医師会からと国からの多重の情報が私を襲ってきました。日常診療で忙しいため、処理しきれませんでした。

ディスレクシアという障害を持つ私は、文字からのインプットが劣っているために情報処理しきれませんでした。ですので、障害を持つ私は潔く医師会活動を完全撤退しました。
スッキリしました。やらなくてはならいことをやれないストレスからの開放です。



2022年後半は、看護小規模多機能サービス(カンタキと呼びます)の補助金を用いての創設に目途が付きました。優秀な部下、カズコさん、ノリコさんたちのおかげです。カンタキは、地域包括ケアを推進させる大切なサービスであり、それをやっと創り始めます。

私が活動する平舘(へだて)地区は、東西には海から、港、街、田んぼ、山までが200mに圧縮され、南北に街並みが連なるコンパクトコミュニティです。風光明媚な自然が広がり、高齢化率50%を超えた25年日本の未来を行く超高齢社会です。

その平舘がアジア健康長寿イノベーション賞の準グランプリを受賞し、中国、タイ、マレーシア、シンガポールの受賞者が平舘見学に来て下さり、地域一体となりもてなしました。
平舘には太くて豊かなつながりが、たくさんあるのでしょう。平舘は豊かなのです。

今年もたくさんの人を看取りました。それぞれに思い出があります。そして、今も自宅で看取ろうとしている物語が広がっています。自宅で最期を迎えることは満足死につながります。そうすると「死んでも生きている」という意味合いが理解できるようになります。

「最期は自宅」という文化を取り戻したいです。


2022年12月19日(月)

食べることは生きること

生きることは、食べること、笑うこと、愛されることと言っています。美味しいものを食べて怒る人はいません。美味しいものを食べると、思わず笑っちゃいます。良い笑顔を見て怒る人もいません。命の輝きは笑顔。笑顔がたくさん集まれば、幸せは広がります。

生きることは、食べること。食べることは、生きること。
死ぬ過程で、人は食べられなくなります。寿命が来ているから、食べなくなるのです。
食べないと死んじゃうからといって経管栄養が始まると、辛い時期が伸びるばかりです。



食べることが困難になったおジイちゃんの物語を書きます。
91歳のショウイチさんは、バイクに乗って一人で生き生き生きて来ました。子供は3人、それぞれに独立し社会で活躍しており、長男は私と同級生で隣り町に住んでおります。

ショウイチさんは、松永醫院のデイケアではなく、なぜか他の介護保険サービスを使っていました。外来で会うたびに次第に弱って、声の力が小さくなってきたかなと思っているうちに入院。そして、入院中に誤嚥性肺炎を起こして人工呼吸器管理となりました。

誤嚥性肺炎は改善するも体はボロボロ。ご本人は自宅へ帰ることを希望するため、リハビリ施設である老健夢くらぶへ転所してきました。入院に伴う廃用性の筋力低下と嚥下能力低下ありましたが、目の力は残っており、食べようと思う生きる力は残っていました。

夢くらぶには優秀なST2人と歯科衛生士2人がおります。こんなに食べることのスペシャリストがいる老健は恐らく他にないと思います。なのに、誤嚥しにくいもの、誤嚥しても危険の少ないものを食べていたのに、誤嚥性肺炎を起こして再入院してしまいました。

再び自宅へ戻るために老健夢くらぶへ戻ってきたときには鼻からチューブの入った経鼻経管栄養状態でした。二度目の入院も人工呼吸器管理になったため嚥下能力はほぼゼロ。サルコペニア嚥下障害、用いずによる廃用障害が一気に進行しました。

声を出したり、何気なく食べているお口の周りの筋肉は小さく、たくさんあります。
そのお口の筋肉は、使わないと簡単に細くなります。そして、細く弱くなってしまったお口の周りの筋肉は、再び鍛えなおそうとしても元に戻ることは困難だと実感しています。

夢くらぶへ戻ってきたショウイチさんは、ドンドン体は元気になって「腹減った!飯喰わせろ!」とどうにか聞こえる細い声で唸っています。しかし現実には、嚥下反射は消失し、気管に誤嚥してもむせることもないため肺炎必発の状態。命の限界に来ています。。。

ショウイチさん、元気に外来に通院している時に いつか来るまさかなことを決めていました。最期は自宅で死ぬこと、心臓マッサージはしない、食べられなくなったら寿命だから経管栄養法は希望しない。胃癌で胃切しているので、尚更胃ロウ増設は難しいです。

ショウイチさんは、死ぬことは怖くないけど辛いことは嫌だとも言っていました。
ショウイチさんは、限界に来ていました。そして、家に帰りたいかと尋ねたら首を縦に振りました。家族の了解を得て、自宅で看取るために夢くらぶを退所しました。

ショウイチさんは、自宅に帰ると目が輝いていました。子供3人とその家族が集まり、親戚、知人が集まってきました。余命約1週間と予測しており、子供3人による最後の親孝行が始まりました。常に寄り添い、スプーンについた水滴をなめさせていました。

日に日に弱くなっていく父、訪問入浴で見た細く小さくなった父の体を見て、子供たちは父の死を受容していったと思います。1週間の最期の親孝行は、人間には寿命があることを伝えた父から子へのラストギフト、父から子への最後の子供孝行になるのでしょう。

おそらく、満足死を達成できたと思う。
その過程には、夢くらぶの優しく自宅へ突き返す素晴らしさ、STの存在の有難さ・余命を宣言できる怖さを知り、笑顔グループの一人の命を支え切るチームケアに感謝します。


2022年12月03日(土)

地域医療とは地域を幸せにすること

ブラボー!日本がスペインに勝った。スゴイ!
ドイツ戦2-1で勝った時、奇跡だと思った。ジャイアント・キリングと呼ぶそう。
でも、今回は奇跡ではなく、大和魂がゲルマン魂に勝ちラテン魂にも勝ったのです。

諦めないこと信じることの大切さ、努力し続けることの大切さを教えて頂きました。
本番では練習以上の力を出すことは難しいので、日ごろから今日できることを精一杯する、その連続の毎日で大きな進歩を得ることができるのでしょう。日本人でよかった。



話は変わります。私の仕事は、地域医療。では、地域医療とは何でしょうか。
目の前の患者さんの困ったことを解決すること。これは地域医療ではなく、ただの医療。
スタッフのツノダ君から教えて頂きました。「地域医療とは、地域を幸せにすること。」

病院から見えない風景がある。病院に届かない地域の声がある。
だから、地域へ出ていくことが大切です。
でも、地域へ出ていけばそれでよいかというとそうではないでしょう。

訪問診療さえすれば在宅医療となるかというと、そうではない。自分の診療時間内だけでしか対応しない、何か困ったことが起こると救急要請し病院受診をさせる、こんなものは在宅医療ではないです。訪問看護などとチームケアを提供し、入院させない予防医療が在宅医療なのです。

でも、在宅医療も地域医療の一つ。望むところで生き切ることのお手伝いです。
「人は自宅で最期を迎えるもの」という文化も再生させたい。死生観を皆で考えたいです。
「よい人生だった!」と最期に言ってもらいたい。健康寿命を延伸させたい。

そのためには、「絆」という豊かな人と人とのつながりをたくさん作る必要があります。
豊かな絆がたくさんあればあるほど、人は健康に、幸せに生きることができます。そのために、地域へ出ていき、地域の人とゴチャマゼになり、新しい文化を創る必要があります。

私の住む南房総は、山にも海にも近い風光明媚な地域で、コミュニティが生きています。この地域で生きてきて良かったと言ってもらう、最期にありがとうと言って満足死を達成することが、私のミッションです。その向こうに、本当の地域医療が待っているのでしょう。


【各月のブログはこちら】
ページのトップへ戻る